21世紀の日本

6. 東アジアとの関係

(1)東アジア(広義)の隆盛と日本

【東アジアの見通し】

ASEAN 10ケ国に日中韓台を加えた東アジアGDP伸長はめざましく、2008年に世界GDP(61兆USドル)の24%を占めて米国に並び、2020年にはEU(加盟27ケ国)のように30%に達すると予測される。 

日本の貿易総額における対米貿易は1990年27%だったが20年間で半減して2008年14%に落ち込んだ。

その代わりに台頭したのがアジア諸国で、中国18%、韓国6%、台湾4%、タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポールが各32%で、フィリピン・ベトナム・ミャンマー・カンボジアと続く東アジア全体で世界の半分近くを占め、今後さらに増加する勢いである。

2010年に中国がGDP2位になるが、日本の10倍の人口を擁し(1人当たりは日本の1割)、2020年まで成長率8~10%の「高度成長」、40年まで成長率4~5%の「中位安定成長」が続くと見られる。

韓国と台湾は、製鉄・造船・自動車・半導体等で経済を発展させてきたが、次いでASEANが台頭してくるのは確実で、東アジアは2050年頃までに人口が30億人に増え『世界の工場・世界の市場』時代が続く。

南アジアではインドが宇宙・医療・情報などの先端技術開発を進めて経済を加速されており、2050年にはパキスタン・バングラデシュを含めた人口が20億人となり、東アジアと南アジアで地球人口の過半数を占める。

 

【日本の立ち位置と物流の課題】

日本からの物流経路を見ると、東アジアは米国(西海岸は約9000km、東海岸はその約2倍)や欧州(地中海側15000km前後、大西洋側18000km前後)よりはるかに近く、青島は福岡から約1000kmの近距離で横浜より近く、比較的遠いハノイでも福岡から4000kmほどで、域内の資源・食糧・製品を海で繋げることができる点でも、民族・文化・歴史という共通点においても日本の立ち位置は東アジアにあるとみることができる。

ところが、日本が取り残される懸念材料もある。物流主体であるコンテナ取扱量の 2008年世界ランクは、1位シンガポール以下、上海、香港、深圳、釜山、寧波、広州・・・10位青島で、日本はそれから離されて20位から50位に東京・横浜・名古屋・神戸・大阪が登場するという状況で物流に遅れをとっている。

米国中心の貿易ではパナマ運河を通れる船体(パナマックス:喫水12m・総㌧数6万5千トン前後・コンテナ積載量2,000~5,000TEU)が主流だったが、今建造が計画されているコンテナ船はスエズ運河を通過できるスエズマックス(喫水16m・10万㌧前後・10,000TEU 前後)が多く、さらにマラッカ海峡(最浅水深25m)を通過できる巨大船マラッカマックス(喫水20m・20万㌧前後・20,000TEU前後)の登場が予測される中で、日本の港は水深16m以下の規格が主体で大型化に対応できず、位置的にも東アジア経済圏から見て「裏日本」に当たる太平洋側や瀬戸内海に集中している問題もあり、大局的な視野で物流態勢を再構築する必要がある。

 

(2)食糧と水に関わる産業の出番

コ ストが高い日本では、工業品も農林水産物も、国内や海外から望まれるような健康や生活に貢献できる産品を生産すべきで、それが結果として経済の安定をもた らす。 東アジアでは、農林水産業から資源と工業品の生産・輸出にシフトしているが、その結果、山が荒れて耕作地が減少し、煤煙・農薬・廃棄物による汚染 と埋立てによる土壌・内水面・沿岸域の環境悪化が進み、各地で公害や水不足=水争奪の紛争が発生している。

今 後は、東アジアの農林漁業生産量が停滞又は減少し、人工増加と食糧不足が進むとともに、農薬による土壌汚染が広がる可能性が高く、川から海に流している廃 水の生物凝縮による水俣病のような公害が発生し、農林水産物の安全性が急速に損なわれていくと推測され、食糧と飲料水は益々重要な物資となって、安全な食 糧と安心できる水を求める機運が高まるのは確実である。

海 に囲まれた日本は東アジアの公害や家畜伝染病の伝播を水際で防止できる利点があり、周囲の膨大な海水による環境維持作用にも恵まれており、豊かな土地と海 で生産される安全な食糧と『きれいでうまい水』は差別化商材としての輸出も有望で、井戸の掘削工事や淡水製造プラントの現地生産・施工等の事業も期待でき る。

 

(3)参加型観光事業の展開

ア ジアからの観光客が急増しているが、特に海・山・温泉・雪などの自然に触れられるコースに人気が高く、我々が思っている以上に日本の美しい自然に魅力を感 じており、四季を通じた特産物の提供、観光地での一寸した会話などで人情に触れることも、海外観光客にとって旅行の印象が深まってリピートにつながる。

そのための自然をより深く体験できるツアー等でアジアからの観光客をさらに誘致できるのではないか。

例えば、
田植え・草刈り・収穫・植樹(樹木オーナー)・木工・炭焼き作業、が体験できる農山村ツアー、

潮干狩り、地引網・定置網・カキやホタテの操業、真珠の採取と加工、が体検できる漁村ツアー、

等の参加型観光を展開し、顧客層開拓につなげることによって観光を盛んにするとともに、その先にある農林水産物の輸出と農林漁業の振興推進に寄与できるのではないかと考える。

 

(4)東アジアとの安全保障のかかわり

東 アジア(広義)共同体構想が提起されているが、この地域の歴史をみると、我が国が大戦で多くの惨禍をもたらし、米国の力の下で経済を発展させたことに対し て好意的ではなく、中国政治体制の不透明さや最近のベトナム・韓国・日本との領土問題に見られる大国意識とナショナリズム台頭に物騒な気配が感じられる が、日本がいち早く経験した教訓を中国に真摯に伝えて、アジアの盟主として道を誤らぬように助言すべきである。

これからの東アジアとの安全保障に関して、日韓米安保体制と、北朝鮮に対する食糧援助と暴発防止策などについて、国民が納得できる十分な論議の上で、中国と協調していけるような方針を決定する必要があるが、他国がどうであれ、我が国は、底力のある経済力とCapacityの大きい食糧供給力を備えた自立国家として、周辺国との地道な関係改善を図り、米・中・東アジア諸国から一目おかれる存在になることが望まれる。

 

(5)東アジアの農林漁業の勢力

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