21世紀の日本

5.健康で安心して暮らせる社会の構築

(1)食文化がもたらす健康維持と国の基礎作り

A 食文化による健康の維持

食文化とは単に旨い・まずか、栄養の有無という捉え方ではなく、食の安全と洗練された味を健康増進につなげてヒトの生活を支え、医療費節減で社会や国に貢献し、さらに人類存続に寄与する思想のことである。

【脂肪摂取のコワさ】

戦後日本統治の一環として食生活見直しを進めた米国は、心臓病・ガン・肥満が多く、医療費が財政を圧迫したため、上院栄養問題特別委員会の「マクガバンレポート」で肉の過剰摂取を指摘して改善を促したが、国民が受け入れず、医療費はGDP比で1970年6%、80年10%、90年12%、2000年15%、09年18%と増え続け、日本の基準(BMI値25以上=肥満)では、成人男子の75%が肥満という実態がある。

日本でも摂取カロリーに占める脂肪比率(公表理想値22%)が1980年25.5%、2005年28.9%と年々増え、並行して肥満が増加し、2006年成人肥満28%、子供の肥満(別基準)6才5%・12才12%と増大している。

食肉脂肪は常温では固体で、飽和脂肪酸が多いために体内に蓄積しやすく、LDLコレステロール(:悪玉コレステロール)になりやすく、肉や脂肪摂取が多い人は、脳・心臓・血管系疾病、糖尿病に罹る比率が高い。

食肉の動物性脂肪や、植物性油脂はカロリーが高いために摂取した時に『うまい』と感じる、言わば原始的味覚『脂味』がある。クリーム類は脂肪が30~45%を占める上に、動物の体が欲しがる『甘味』が加わることによって、原始的味覚の相乗効果で脳に『もっと食べたい』と感じさせるので、摂取すればするほど理性で止められなくなり、最も大切な食の安全(健康)さえ放棄させ、糖尿病などに罹るリスクを高める。

国産や外国産日本向け食肉は、牛肉霜降り(:脂肪交雑)・牛赤身・豚肩・豚ヒレ・内臓とも脂肪が多く、それが『旨い肉』=高い肉とされている。 最近の焼き肉用の腸(ホルモン)は脂肪膨れの『内臓脂肪』そのもので、霜降り肉や脂肪の多い内臓を尊ぶ日本人が多いが、欧米人の多くはそれを極端に嫌う。

 

【旨味の活用による健康づくり】

『旨 味(うまみ)』は、甘味・酸味・塩味・苦味と並ぶ生理的基本五味の一つで、本能が欲しがる『脂味』『甘味』の呪縛から解き放つ効果があり、『旨味』を子ど もや外国の人達に伝えることによって、健康体と健康寿命に寄与し、旨味を多く含む魚介類増産によって、畜産に向けられる穀物を人間用主食として確保でき る。

日本食の最大の特徴は魚介類と海藻が多く、日本人の繊細な味覚が育てた洗練された料理が豊富である。 

魚 介類には旨味物質イノシン酸が多く、イワシなど青魚やアサリなどの貝類と海藻には別の旨味物質グルタミンが多く含まれているために『旨味』が感じられ、イ ノシン酸とグルタミンを豊富に含む魚貝類やコンブなどの海藻を同時に食べると旨味の相乗効果で味が一段と引き立って『本当にうまい』と感じる。

 

B 身体と頭脳を生き生きさせる魚介類

魚介類に含まれる不飽和脂肪酸DHA・EPAは中性脂肪やコレステロールを減らし、食肉に多い飽和脂肪酸の量的摂取や植物油の過剰摂取による高血圧・動脈硬化・脳梗塞・心臓病・腎臓病を予防する。

魚の油脂は不飽和脂肪酸を多く含み、常温で液体(脂肪油)のために血管内や内臓に滞留せず、脂が乗ったサンマ・寒ブリ・マグロなどは肉の表面が脂肪油で白く見えるが、それこそが健康によい証拠である。

魚 食が頭脳によいと言われるが、日本人が魚介類や海藻を摂取してきたが柔軟な発想・細やかな感情を育て、発想の自在性が急な近代化と経済成長を可能にしたも のと思われる。一方、最近の学生や学童の著しい学力低下と運動能力低下には、肉食偏重と魚介類や海藻の摂取量減少が影響しているのではないかと危惧され る。

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C 国民と国家の足腰をしっかりさせる

骨粗鬆症による女性の転倒骨折が非常に増え、治療に数か月を要することが多く、高齢者はそのまま寝たきりや、ウツになることもあり、他の病気を併発して死に至ることも多く、本人はもとより家族をも苦しめる。 肉食偏重が影響して就学児童が簡単に骨折する実態もある。骨の健康にはカルシウム・ビタミン・ミネラルが必要で、魚丸干し・煮干し・鰹節・コンブ・ワカメ等を摂って足腰をしっかりさせることが望ましい。

 

『足 腰のしっかりした』身体づくりは、国を守る安全保障の基本であり、地球の食糧問題に大きく貢献するものである。そのためには農林水産物自給と輸出を目指し て、国を挙げて品質・価格・生産体制・流通の課題を解決して国際的に通用する『足腰のしっかりした』農林漁業とその産品を育てなければならない。  

既 に始まっているが、国際的な食糧獲得競争が激化するのは自明で、米・ロや投機筋などがその機に儲けようとするのは当然で、買いたくても食糧を輸入できない 事態が起こりつつある。食糧不足は人命に直結するものであり、早急に輸入依存を改め、安全な食糧が確保できる食糧安全保障体制を確立することが望まれる。

 

(2) 永続できる社会の実現

A 健全な子どもと若者を育てる

子どもや若者がケータイやゲームにうつつを抜かし、架空(Imaginary)世界に閉じこもっているが、このままではまともに生きられない大人になり、その先には、襷リレーができずに落伍する家庭や国家がある。

草食系男子と呼ばれ、結婚しない若者が急速に増えているが、自然界で餌が減ると繁殖数が減って群れの数を調節する作用が働くのと同様に、生きて行くことに不安を感じる若者が生物としての本能から繁殖を躊躇し、結婚を避けているのではないかと思われる。

人が判断できる力や生きる力は、親や兄弟あるいは祖父母、友人、先生、近所の人等との人間関係で培われ、社会生活や自然体検や通して状況への対応を学び、厳しさや喜びを味わうことによって備わるものであり、今、日本の若者に特に必要なのは『自分で生きて行く』という覚悟をつけることである。

それには、農・山・漁村で生活しながら、草刈り・収獲・炭焼き・漁などを通して、自然や生き物に触れ、他の生物の命を奪って自分たちが生存していることに気づき、困難な時の対処法を学び、協力して仕事を達成することによって、生きる力、試練に負けない力を身につける必要がある。

今、社会に求められているのは、まじめに働けば食糧が得られ、安心して生活できる仕組みを構築することであり、そうすれば自ずと若者が持ち場を求めて働き、結婚するようになる筈である。

B 高度耐久性技術開発

生態学Ecology:生物と環境及び共に生活するものを論ずる科学は、19世紀に芽生えたが、20世紀が終わる頃に急に大きく取り上げられるようになった。 それは、太古以来、窒素循環・炭素循環によって地球環境が維持されてきたが、現生人類の異常繁殖である人口爆発によって、人間が作り出す構造物と廃棄物によって地球の受容・処理能力が限界に達したもので、この100年に人間が生じさせた廃棄物が、人間の手では処理できなくなり、自然の循環システムを利用するしか対策がないことが分かったからである。

21世紀は、日本の人口が急激に減り、2050年には現在の75%の9500万人、2100年にはその半分の4800万人になると予測され、20世紀に造った道路・橋・ダム・建物の耐用年数が順次使用可能限度を超える。

急激な人口減少社会を目前にした現在は、公共投資を計画的に削減する時期に来ており、すぐにそれを始めないと構造物補修に追われ、財政が圧迫され、使われなくなった残骸が景観や環境を破壊することになる。

既 に廃棄物が処理能力限度に達して瓦礫の捨て場がなくなり、人工の物をこれ以上増やしたら後で泣くのは我々の子孫であり、線路・道路・ダム・橋梁・ビル・住 宅などを長期使用するための技術開発や、高度耐久性構造物の開発、循環できる材料=木や竹の強度・耐久性向上技術開発などによって、資源節約・環境負荷軽 減を図るとともに、これらの技術を新しい商材として普及し輸出することが経済再生のカギとなる。

 

C 環境の維持と再生事業の考え方

地球では太古以来、生物の窒素循環・炭素循環が営々と行われ地球環境が維持されてきたものである。

還 元者(:掃除屋)と言われるダンゴムシ・ミミズ・ダニなどの陸上小動物や、カニ・エビ・シャコ・貝類・ナマコ・ウニ・線虫などの水中生物が動物の死骸や朽 ちた植物を食べ、その後を引き受けるカビ・アメーバ―・バクテリア・ウィルスなどの微生物の力で跡形なく片付けられ、循環している。

東京湾・三河湾・伊勢湾・瀬戸内海・有明海・大村湾・鹿児島湾などでアサリ等の貝類が減ったために海が急激に汚れたことは周知で、近年アサリなどの濾過食性二枚貝を積極的に増やすことによって、食糧供給と環境の維持・再生を同時に進めることができる。

人類の活動で増える窒素・カリを植物プランクトンが取り込み、次に二枚貝が、植物プランクトンを吸い込んで濾過して浄化するもので、アサリ1ケが1時間で1ℓの海水を浄化するという大きな浄化作用を持つ。

貝類の糞をナマコやゴカイ等が食べ、さらに線虫などの小動物が食べ、それをバクテリアが分解し、バクテリアを植物プランクトンが吸収するという生物循環を行っている。その生物循環を行うコストはタダである。

【日本で最も汚れ「死の海」と言われた洞海湾の浄化事業とコスト】

洞海湾は、18億円を掛けてヘドロを浚い水流を作った工事等で生物が棲むようになり、『奇跡の復活』が進んでおり、水質・底質改善にロープを吊り下げるムラサキイガイ・海藻育成やゴカイ投入による浄化を試みている。

本格的浄化にはムラサキイガイ5,000~10,000トンの育成が必要とされるが、事業に要するロープ等の資材・種苗コスト試算は 約10億円で、浚渫工事とともに効果に比べて非常に少ない。現場施設設置・育成作業は市民参加とNPO法人の委託事業として進められるが、本来の浄化作業は貝類等の生物循環を利用するので、無料である。

 

無知が生んだ温暖化、犯罪が生んだ公害

「無 知な動物ほど危険を犯して破滅に向かう」という生態学的見方によれば、人類は、文明という愚行で、環境を破壊し、自然界の循環機構の構成員である多くの生 物種を絶滅させているが、地球温暖化・気候変動、公害は、自らを瀬戸際に追い込んで破滅に向かっている姿そのものであると言う。

温暖化について環境保護意見が主流となっている中で、経済至上と考える一部学者やジャーナリストが異を唱えているが本質から外れた論拠が多く、人の生き方や生物・環境全体の視点での考察が必要である。

公害とは文明がもたらした典型的な環境破壊であり、私企業の経済活動によって環境が破壊されて生じる人為的な社会的災害=『私害』であり、被害は人間だけではなく、他の生物への影響が甚大で深刻である。

四 大公害(イタイイタイ病・水俣病・四日市喘息・第二水俣病)は原因企業が隠蔽し、市民を守るべき役所が原因物質特定を引き延ばし、権力に阿諛する御用学者 が事実を捻じ曲げるなど、殺人や傷害に匹敵する犯罪行為が幾重にも重なって被害を拡大させたもので、被害者救済は常に後手に回っている。

 

(3)財政健全化と安心できる社会の実現

国債が過半を占める一般歳入などの予算・歳出・事業面で抜本的な改革を断行する必要がある。


A 法人税・所得税改訂による歳入改善
不況が続く時の税制論議は平均所得層以下の民意を重視し、富の再分配(不公平是正)を基本とし、
税収財源はまず、企業の法人税率(2011年5%引き下げ)を40%台に戻し、持ち株配当無税等の優遇策を止めて課税し、次に高額所得層の所得税率引き上げを行い、低所得層に負担を強いる消費税増税は最後の手段とすべきである。
現行所得税超過累進課税は、下表に見られるように年収1,000万円の実質税率12%、年収2,000万円21%と、高額所得層の税率を抑えている実態があり、貧富の格差が広がる現状では、国民感情として不公平感が強い。
所得税は、民間企業平均所得430万円(07年)を境に、それより上の層の税率を引き上げて増収を図るとともに格差是正を行うことが求められる。 その結 果として、民間より年収が高い国家公務員(平均660万円)・地方公務員(平均720万円)の負担が増えるが、官民の不公平是正としても理解が得られると 思われる。

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B 歳出削減と公務員削減
2010年度一般会計92兆円に対して、特別会計は367兆円と大きく、一般会計と特別会計の重複部分を除いた正味の約240兆円が本来の国家予算である が、 特別会計は省庁や族議員の裁量で扱える仕組で、無駄な事業、国民に知らされない流用、勝手に蓄えられる「埋蔵金」など、不正の温床にもなってきた。
人口収縮と高齢化が急な借金大国日本にあって、不急の事業、将来使用されなくなる施設、社会の重荷になる要素は大ナタを振るって削減し、極力早期に歳出と負債を最小限に抑えることが不可欠である。
公務員はまじめ故に仕事を作り、能力故に天下り等の自己保全に走る傾向がある。国家公務員約150万人( 防衛省28万人・公社公団46 万人・政府系企業30万人含む)と、地方公務員約360万人(地方公社・公営企業80万人含む)の経費と事業費及び天下り先事業を見直して、本当に必要な 事業と人員以外は思い切って削るとともに、既に始まっている人口と経済の縮小に整合するように削減することが急務である。

 

C 年金積立財源の確保
日本は2010年に65歳以上の人口が23%に達したが、2025年30%、2050年40%と増え続ける。
2004年年金改正は、厚生年金の現役世代納付負担率を6.8%から9.15%とし、モデル世帯受給額を現役世代手取り給与の59%から50%に調整する が、高齢者1人当たりの現役世代は1990年5.1人、2000年3.6人、10年2.6人(以下推測20年2.0人、30年1.8人、40年1.6人、 50年1.4人)と急減し、不況で納付額も減少し、+5~10兆円/年を見込んだ運用収支は▲5~10兆円/年となり、総合収支▲10~15兆円/年が続 き、04年計画段階で08年度末厚生年金積立金予算は156兆円だったが、実際は117兆円で39兆円マイナスであった。
このまま放置すれば積立金は10年ほどで消滅するおそれがあり、積立金枯渇は年金制度崩壊につながるが、もし、そうなると、社会不安が一気に拡大して国全体が混乱するのは必至で、絶対に避けなければならない。

その対策として、次の3点の早期着手を提案したい。

高額年金受給者を主な対象とした累進的受給額漸減措置の実施
優遇されてきた公務員などの共済年金との一元化
社会福祉と税の一元化を進めて財政から補填:財源⇒法人税と高額所得層所得税の税率改訂など(前頁)

 

D 高齢者・弱者支援NPOの提案
高齢者が生きがいを見失って健康を損なうケースが多く、高齢者医療費が健保財政を圧迫している。
高齢者は、年金受給の上で適度な労働条件で働くことが可能であり、農林漁業や介護などの労働力を確保し、必要な時に支援が得られる制度を確立するととも に、若くても仕事につけない人・身内がなく孤立している人・障害のある人、を支援する事業を起して安心できる社会を形成する必要がある。 
『今日の隣人のため、明日の自分のため』の趣旨で、健康増進、仕事作り、医療費・介護費節減を目的として、高齢者・いわゆる社会的弱者を主体にした会員制有償支援サービス事業を行うNPO法人設立を提起する。

【事業概要】

支援業務として、集いの場提供、食事・趣味・教養・運動の指導で健康維持増進を図り、希望に応じて、介護、入退院、災害避難、集団生活、結婚相談、慶弔(結婚・葬儀・納骨)など生活全般の支援を行う。
専門的支援として、年金・健保・介護保険・納税・生活保護の手続き、保証人対応、債権・債務・財産・遺言の管理及び後見人制度対応、詐欺商法対策、等の事業を行い「安心社会」実現の一歩とする。
事業は職員・ボランティア・外部委託で行い、希望者に訓練をして当該法人や関係先就労斡旋をする。
労働対価は働く人と相談の上で年金や生活保護等の受給を勘案して、若い世代が生活できる給与支給を目指し、賃金の他に、自身や家族が使える『福祉サービス受給券』『介護受給券』等の形で支給する。
事業運営費は会員(正・賛助)の会費、事業収益、所有資産の売却・賃貸、寄付などを充てる。

(添付資料「安心できる社会を創る会(仮称)設立趣意書」「 同 定款案」参照)