21世紀の日本

3.日本の過去

3 日本の過去(1)-本質追求からの考察と提言-

(1)日本人が失ったもの

A 明治維新と近代化で失ったもの

「勝てば官軍」は、非常に意味深い言葉である。 戊 辰戦争=薩長クーデターの緒戦の鳥羽伏見の戦いで、3倍の戦力を有していた政権(幕府)側が順当に勝っていたら、薩長軍は追い落とされて賊軍となって歴史 が変わっていた筈だが、宮廷工作による官軍と賊軍の立場逆転、「天照皇太神」とだけ書かれた『錦の御旗』の予期以上の効果、徳川慶喜の敵前逃亡という、信 じがたい打算・捏造・珍事が大勢を決め、維新の扉を開いた。

歴史は『もし・・』がなく、勝者の都合に合わせて作られて後世に残るのが常であるが、維新に至る2年半に及ぶ内戦とその後の新秩序組立に際しては、無数の不条理が罷り通って近代化への道をひた走った。

結果として、「19世紀のグローバリズム」の潮流の中で植民地にされる側から植民地を奪う側に回ったが、戦 争に明け暮れた欧州で定着した、勝つために何をしてもよく、勝った方が正義という「勝てば官軍」思考は、日本人の心に深く刻まれ、その延長に宣戦布告しな い真珠湾攻撃があった。それを待ち構えたような連合国側の『正義の戦い』から『悪への報復』という構図での市街地空襲や二度の原爆投下等のむごい仕打ちを 受けた。

「勝てば官軍」思考は日本人に根付き、まともな社会の形成に欠かせない倫理が押しやられてしまった。

 

B 戦争で失ったもの

兵士・軍属230万人、空襲・沖縄侵攻・原爆で市民80万人が犠牲になり、怪我や病気をした人、身近な人が死亡や傷病を負った人、生活・仕事・財産を失った人、など国民の大半が大きな損害を受けた。

活路を求めてアジアに出て行った日本を連合国側とロシアが待ち受けていたという側面もあるが、手順を経ずに戦端を開いた責任は免れず、その結果として手酷い仕打ちを受けたたことも忘れるべきではない。

戦 闘・飢え・病気で亡くなった兵士や民間人、体当たりで散っていった若き特攻隊員、連合軍猛攻撃の捨石となり基地を押し付けられた沖縄の人々、市街地空襲や 原爆で亡くなり傷ついた無辜の人たち、虎の威を借りた憲兵や特高の被害にあった人、帰国中に命を落とした人や置いて行かれた孤児、抑留で理不尽な死を遂げ た人や苦難を負った人、日本国軍隊に殺された外国民間人、重労働や慰安を強制された人々、の悲痛や無念さを、残留孤児を育ててくれた『中国の親』の恩を、 絶対に忘れてはならないのである。

そ して、今の日本が、平和を夢見て、後世に希望を託して、亡くなっていった人に顔向けできる祖国であるか否か、時々は思い起こさなければならない。  戦争 は政治家や軍人だけの行為ではなく、公務員・学者・教育者・作家・評論家・土地の有力者など『上位者』やマスコミも阿諛し美化したが、ナショナリズムの渦 を大きくしたことを忘れ去ったかのように何食わぬ顔で戦後社会に横滑りし、今度は、経済至上、20世紀のグローバリズムを煽ったことを、忘れてはならないのである。

 

C 戦後処理で失ったもの

【引揚者の悲劇】

終戦直前・直後の外地からの引揚では、一早く情報をつかんだ軍関係者やその家族は「自分たちさえ助かれば」という身勝手さで民間人を放置して我先に帰国した。民を守る筈の軍の裏切りが人心に深く刻まれたが、

本来、どこの軍隊でも国民を守る任務はなく、日本国軍は天皇と軍人を守るだけの存在だったのであり、それが戦争という国同士の殺し合いの本質なのである。

日本を目指した民間人は、中国人や朝鮮人の復讐やソ連兵の暴虐、家族の死、病人や子どもを捨てるという悲惨な逃避行の末にやっとの思いで故国に辿りついたが、帰国後に「引揚者」として差別やいじめを受けた。

【シベリア抑留の悲劇】

終戦直前にソ連が中立条約を一方的に破棄して満州・朝鮮に侵攻し、終戦翌日、まるで火事場泥棒のように樺太・千島を占領して合計70万 人をシベリア各地に送り、酷寒の下で過酷な労働を強いて、飢え・傷病・寒さ・絶望で死に追いやった。  国はソ連に毅然たる態度で交渉せず、代わりに現地 に送られた社会党視察団は、抑留者の実態を把握したにも拘わらず、党の思想宣伝の都合で抑留者から託された手紙を握りつぶし、国会で抑留者は十分な待遇を 受けていると虚偽報告をしたために、待遇が改善されず、帰国が遅れた。

ここでも『上位者』の身勝手な言動が犠牲者をあたら増やしてしまったが、その事実が判った時、本人や家族がどんなに悔しい思いをしただろうか。 しかし、張本人は罪のカケラも感じていなかったのではないか。

【極東軍事裁判の茶番と戦後の政治家や官僚の犯罪】

極東国際軍事裁判は、戦勝国が敗戦国を一方的に裁いた点、JHQ最高司令官マッカーサーの統治上の意向で天皇の訴追が回避された点、市街地空襲と原爆投下が裁判の対象から外された点で、国際法上でも重大な疑義があり、統帥権を笠に戦争を進めた陸軍参謀や海軍軍令部将校が訴追を免れた点にも粗漏がある。

A級戦犯(戦争指導)約200名の内、東京裁判では起訴28名中、病死等を除く25名が有罪(絞首刑7名、終身刑16名、有期禁錮刑2名)となり、アジア各地で行われたA級・B級(通例の戦争犯罪)・C級戦犯(人道上の犯罪)は殆ど弁明の機会すら与えられずに判決が出され、合計1000人以上が処刑された。

さらに、外地住民や兵士の誤解・捏造・復讐、日本兵の密告で、殺害された人も多かったと言われる。

 

戦 争=日本史上最大の事件の総括で曖昧な決着が図られ、政治家・官僚の多くが戦時の罪から逃れたために後の犯罪につながり、政治家や官僚など『上位者』が責 任をとらない社会を生み出し、「国家のため」を標榜しながら権力やカネを追いかける事件が後を絶たないことも改めて認識すべきである。

国民のためのまっとうな政道から外れた、政治家や官僚の事件があまりに多すぎる。そのような犯罪・不正を繰り返させないためには、事象や事件の検証をしっかり行い、罪を償わせることが必要である。

 

D 政治家・官僚・企業経営者の犯罪や不正   

【昭和電工事件と造船疑獄】

終戦の僅か2年後に、芦田総理・西尾副総理・福田大蔵省主計局長らが昭和電工の工作資金を受領し、翌年起訴されて内閣総辞職に追い込まれたが、58年東京高裁では不可思議な経過で無罪となり逃げ切っている。

1954年、海運会社や造船所に政治家や官僚が融資を有利に進めたとして70名が逮捕された造船疑獄では、本命の佐藤栄作自由党幹事長・池田勇人政調会長は逮捕寸前の指揮権発動で逃げおおせてしまった。

池 田勇人・佐藤栄作・福田赳夫の三氏は、その後自民党総裁・総理になったが、戦後間もない二つの事件が『政治権力を行使すれば逃げ切れる』という風潮を強め て政界を汚染した。三氏の業績を評価する声もあるが、政官上部の犯罪が及ぼす影響は計り知れず、それに続く者が現れて同様の悪行が連鎖的に広がって行っ た。

 

【ロッキード事件及び同じ系譜の政治家・官僚・企業経営者の犯罪や不正】

ロッキード社トライスター売込み工作は、欧州・日本の政財界を巻き込み、ニクソン大統領も関与していた。 1976年に田中角栄元首相・橋本元運輸相、佐藤運輸政務次官が受託収賄罪で逮捕され、政官の権力者にすり寄る全日空・丸紅の贈賄と社内権力闘争、政商小佐野や右翼児玉などが絡む『総理の犯罪』が明らかになり、最高権力者も敏腕政治家も一流企業も名士も、カネと権力の狭間で蠢いていたことを白日の下に曝した。

1988年リクルート事件、92年東京佐川急便事件、93年自民党元副総裁金丸信脱税事件は、現首相、多くの前・元首相、現・前・元大臣、各派閥領袖以下の自民党及び野党の計100人以上の政治家と、官僚、企業経営者などが群がり、関与したもので、カネ絡みの悪事が際限なく繰り広げられていたことを明らかにした。

 

【公務員・警察の犯罪や不正】

1996年の厚生省事務次官収賄と薬害エイズ事件、98年の大蔵省接待汚職、公務員特有の隠蔽体質が起こしたB型肝炎事件に続いて、極めつけの2004年からの社会保険庁による不正・怠業と、社保庁労組のヤミ専従事件は「人間はどこまで卑怯でずるいことができるのか」という醜悪さを見せつけ、人間不信を決定的にした。

又、市民を守るべき現職警官の婦女暴行殺人や県警の裏金問題などが起きたが、官僚や警察の権力は絶大であるだけに、その犯罪は人心を惑わせ、国を滅ぼす元凶となる。だから、絶対に許してはならない。

 

国の運営における最大の課題は、政治家と公務員を監視しながら力量を最大限に発揮させることである。

上位者ほど倫理感では自らを律することができなくなり、『お上』であるかの勘違いをして公金を使い、罪を犯しやすくなるようで、それが社会に深い影響を及ぼすことを重視し、地位に比例した量刑となるように法を改正し、公務員制度改革と行政をチェックできる情報公開制度を強力に推進することが不可欠で、上位者が常に襟を正すような制度を整えることが、健全な社会再生の第一歩であり、避けて通れない筋道である。

 

3 日本の過去(2)-本質追求からの考察と提言-

2)日本人の生き方に影響した事象・事件

A 大戦から現代までの世相と重大事件
 
(※)内は1945~49年を100とした時の10年換算指数

◎世界的な事件・問題、①政・軍・官・学が関与、②社会的事件、③事故、④殺人(件数の約90%占める)

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B 日本人が直面した24の事象・事件

1地球規模の問題=人口と食糧、環境と災害、産業と経済、安全保障と国際情勢

①人類存続に警鐘を鳴らし地球異変を告げる人口・食糧問題、気候変動、生物種絶滅。

②阪神淡路大震災、世界各地の大地震と津波、異常気象、鳥インフル・口蹄疫の流行。

③東西対立、朝鮮戦争(南北分裂)、北朝鮮の在日家族帰還・拉致事件・核とミサイル。

④日米安全保障条約成立・安保反対闘争・沖縄基地問題、ベトナム戦争、イラク派兵。

⑤冷戦終結後の米一国支配による不安定な世界情勢と先進国都合のグローバル経済破綻。

⑥中国・インドなどアジア勃興、産業空洞化と輸出不振、経済停滞とデフレ、財政悪化。

2政冶家・軍人・官僚など『上位者』の驕りと欺瞞に起因する事象・事件

〔戦時・終戦直後〕

①明治の統治から始まった天皇制が統帥権・神国思想で強化されて国を戦争へと導いた。

②軍隊が行った中国など国外での虐殺・生体実験を含む捕虜虐待、公安警察の民間弾圧。

③学者・教師・宗教団体・企業家・マスコミ・地域有力者等『上位者』の戦争協力賛美。

④軍神・戦艦大和・ゼロ戦・本土決戦が、連合国の科学・技術力・物量・原爆に敗れた。

⑤極東軍事裁判で勝者は一方的に敗者に罪を負わせ、国と国民は全て戦犯に罪を被せた。

⑥戦争を指導し上位者に阿諛した政軍官学産民に反省なく、戦後一転して民主主義信奉。

〔戦後~現代〕

①米国による政治・経済・教育・食糧政策・生活・スポーツ・娯楽を通じた日本属国化。

②総理や大物政治家の犯罪、長過ぎた自民党の金権・許認可政治を操っていた中央省庁。

③警察を含む官僚の犯罪と、不正・隠蔽・保身・権力保持・天下り先法人乱造の構造悪。

④公務員の傲慢・怠慢・欺瞞・卑怯さを見せつけた社会保険庁不正と、組合ヤミ専従。

⑤官庁・自治体・御用学者が放置した公害(水俣病などの災害)と薬害(エイズ・肝炎)。

⑥中学生のイジメや自殺事件における学校・教育委員会の事実隠し・自己保身・無責任。

3日本人の生き方から生じた社会現象

①食糧と安全保障を外国に頼った国家、飽食・ケータイで心身の健康が損なわれる国民。

②『自制・謙虚・思いやり』を捨てて、『自分さえよければ症候群』が蔓延する社会。

③『カネがすべて病』に罹った個人や、企業・銀行・各種団体・病院などの事業体。

④イジメ・家庭内暴力・自殺が増え、生活・就職・老後の不安に慄く超少子高齢社会。

⑤有能な技術者が簡単に洗脳され殺人を犯したオウム真理教の怖さ。ヒトの迷いと不安。

⑥驕った病院や無責任な教育関係者、身勝手な「モンスター」ペイジェント・ペアレンツ。