21世紀の日本

1.はじめに

‐本質追求からの考察と提言- 掲載について

21世紀が11年目に入ったが、混迷の度を深めるばかりである。

何とかしないと大変なことになりそうだという予感や不安を、多くの人が抱いている。

「幸せですか、今の社会を子や孫に引き継げますか」の問いに「ハイ」と答えられる人は稀で、社会は大きな歪を抱え、『何か』を抜本的に変えないと事態は好転しないように見える。

それが何であるかを追求する目的で、冒頭のテーマで、様々な角度から考えてみたい。

 

手始めに、様々な機関や研究者が発表している『幸福度』『幸福度指数』を拾ってみた。

A全米科学財団による97ケ国・地域の2008年『幸福度・生活満足度』アンケートでは、

上位=1~10位は北欧諸国やスイス等・15位ニュージーランド・16位米国・30位ブラジル、

中位=36~45位の独・仏・スペイン等のEU主要国までが幸福が感じられる範囲と見られ、

          43位の日本、48位台湾・54位中国・62位韓国などの東アジア諸国は、それに次ぎ、

下位=69位インド・88位ロシア・90位以下アフリカ諸国、は不幸と感じている国です。

 

B英国新経済財団による約140ケ国の2009年幸福度指数(生活満足度・寿命・環境)評価は、

上位=コスタリカ・ドミニカ・キューバ・ブラジル・アルゼンチンなどの中南米諸国が多く、

中位=EU諸国は概ね40~74位までに入り、68位韓国・75位日本などもこのランクで、

下位=108位ロシア・114位米国・130位以下にアフリカ諸国が連なるという結果です。

 

日本は主観的評価Aも客観的評価Bともに中位にあり、ほぼ妥当な処だろうと思いますが、国民の多くはそう思わず、もっと自己評価が低く、不安と不満が大きいと思われます。

幸福かどうかの評価は設問条件で異なりますが、結果には共通点があり、経済力(GDP)や便利さなども関係するが絶対ではなく、『自然・安全・民主主義』が最重要な要素です。 即ち、

豊かな自然、②安全な社会・武力を行使しない国、③民主的で成熟した社会、という条件をヒトは求めており、「豊かな自然があって、安全で、良好な人間関係が得られる国」こそ、豊かさ・安心・生きがい・幸せが得られる国家と見てよいと思います。

日本には、豊かな自然と細やかな人情がありましたが、先進国に追従した経済成長と開発、便利すぎる生活、飽くなき欲望と引き換えに、山河が荒れ、海が傷つき、自らの精神をも劣化させて、幸せになれないことに気づき、愕然としているのが実情でしょう。

国民の多くは、『カネがすべて病』に罹りましたが、世論調査では、既に、1970年代に、「中流程度の収入(民間企業平均年収は75203万円、2006年は約430万円)があれば、それ以上の収入や物質的豊かさより『ゆとり』を望む」人が4割を超えていました。

ところが、仕事がない人や正規の半分の収入さえ覚束ない非正規雇用の人と、過労死やウツになるほど激務に追われる人が、小さくなったパイを奪い合う変な国になってしまいました。

「では、どうすれば良いのか」について、タイトル「21世紀の日本人の生き方」を、次の目次(掲載予定項目)に沿って順次掲載していきます。ぜひお読みください。(岩田)

 

1.はじめに-本質追求からの考察と提言-

【井上ひさしさんの遺言】

井上ひさしさんが闘病中に書いたノートの最後に、次のように記されている(文芸春秋2010年7月号)。

「過去は泣き続けている―― たいていの日本人がきちんと振り返ってくれないので、

過去ときちんと向き合うと、未来にかかる夢が見えてくる。

いつまでも過去を軽んじていると、やがて未来から軽んじられる  過去は訴えつづけている

東京裁判は、不都合なものはすべて被告人に押しつけて、

お上と国民が一緒になって無罪地帯へ逃走するための儀式だった。

先行きがわからないときは過去をうんと勉強すれば未来は見えてくる 

瑕こそ多いが、血と涙から生まれた歴史の宝石 」

【なぜ私たちは不安なのか】

閉塞状態の政治経済、人口・食糧問題と気候変動、不況、不穏な気配の東アジア情勢、

不安定な生き方と将来の不安、が混然となって出口が見えない状態が続いている。

これからの時代に希望を持って生きるために、

「日本人は21世紀をどんな時代にすべきなのか」というテーマで考えていこうと思う。

手始めに、井上ひさしさんの遺言に沿って過去の検証を行った。そこで見えてきたものは、

繰り返されてきた政治家・官僚・企業家など『上位者』の犯罪や無責任な言動が社会を惑わせ、

上位者を信じなくなった国民が矜持を捨て、倫理より損得を選択し、本質から外れた生き方を

してきたために、誰もが、どうすればよいか判断ができなくなった顛末である。


【今、どうすればよいのか】

孔子は論語の顔淵十二の七で、国政の心構えと統治の条件について説いている。

国には「信」:信頼、「食」:食糧、「兵」:軍隊、の順に重要で、最も大切な「信」がなければ

国家が成立し得ないという「民に 信無ければ 立たず」の結語で終わる有名な教えである。

「子貢問政、子曰、足食足兵、民信之矣、子貢曰、必不得已而去、於斯三者、何先、
曰去兵、曰必不得已而去、於斯二者、何先、曰去食、自古皆有死、民無信不立」

今の日本は「信」が失われ、「食」:食糧と生活の不安が増し、「兵」:安全保障に危機を抱いている。

以下において、日本の現状を検証し、21世紀に求められる生き方について、私見を述べたい。