コラム

9.魚の味:『うまい』『まずい』は誰が決める

2009年06月15日

  『うまい』『まずい』は個々人の感覚ですが、母親の嗜好が子どもの嗜好を決めると言われ、幼児期の食生活の重要性が問われています。その後、成長につれて味覚の発達と嗜好の変化が起こり、食の経験が加わって嗜好が確立されていくようです。

 

    GHQは戦後の学校給食に食材を提供してくれましたが、学童への欧米風の味の『刷り込み』によって、アメリカの食糧戦略を日本に浸透させる伏線があったようです。

 

    私の魚との出会いは戦後まもなくで、やたらとしょっぱい「シャケ」=塩サケと「タラコ」=スケトウダラ卵巣塩漬け、サンマの開きなどでしたが、魚に求められる三条件『姿・鮮度・味』に欠けていて、好きになれませんでした。

 

    当時スイトン(醤油汁の中に小麦粉の団子が入った代用食)をよく食べましたが、時折父親が作ってくれた支那ソバ(=後に中華ソバ、ラーメン)は支那竹と鳴戸が載っただけの鰹節ダシのさっぱりした『旨味』があり、今でもその味が最高と思っています。

 

    その後、日本ではアメリカ型の油脂の多い食事や食材が増えるにつれてラーメンが脂っこくなり、今は油脂の『脂味』の魅力で客を掴むことを主眼にしているように感じられますが、味の本質とは少し方向が違うような気がします。

 

    油脂分の多い食材を好きになったのは10才位で、パン工場に行き、店員がコッペパンを切り開いてバタークリーム等をこってりと塗ってくれるのを買うのが楽しみで、この時の『脂味』に魅了されたためか各種クリームや甘いクリームの類は今でも好物です。

 

    小6で千葉県館山市に引っ越して素潜りを覚え、5~9月の休日は毎日、オンボロアパートのガキ仲間を引き連れて館山湾に浮かぶ「沖の島」に行って終日過ごしていました。

 

    みんな貧乏のためにおにぎりも持たずに出かけ、途中の畑で「調達した」サツマイモや、いくらでも獲れたサザエ、獲った時に殻が割れたアワビ、手製の銛で突 いたカサゴ・メバル・イセエビなどを焚き火で焼いてメシ代わりに食べ、食後は木陰で昼寝をしました。(今思うと、何と贅沢な遊びと食事、そして自由な時間 を満喫していたのでしょう)

 

    「沖の島」には台風が近づいた時でも通いましたが、ある日魚も貝も全く姿が見えず、腹が減ったので普段は見向きもしないムラサキウニを獲ってきては焚火に くべて、焚火番をさせていた小2~3のチビガキたちと焼けたものから次々に割って卵巣(可食部)を取り出して腹を満たしましたが、食べ過ぎて気持が悪く なったことを思い出します。

 

    今、回転寿司でウニやイクラが載った軍艦巻きやトロが子どもにも人気がありますが、これらはかなり『脂味』の強い食材で、子どもの脂味嗜好が進んでいる表 れであり、成人後の健康はもとより、その嗜好が子孫に伝承されることが懸念されます。 もっと食材本来の『旨味』を味わうようにすることが大切だと思います。
(続きます)

カテゴリ:魚の味