コラム

28.私の時代認識10

2010年04月29日

【産業革命と明治維新:近代化の本質】

 欧州では生活を豊かにするために工場制手工業(マニファクチャー)が発達し、域内での生活物資の生産は足りていましたが、1760年代にイギリスで起こった産業革命は、機械化による大量生産を促進させ、外国に工業製品と農産物を売ろうという機運を芽生えさせました。

 19世紀初頭には大量に速く遠くに運搬できる蒸気機関車・蒸気船が実用化されて交通、輸送力が増強され、アングロサクソンの英米を初めとする欧米の経済・軍事力を突出させ、植民地獲得競争に拍車を掛けました。

 

  ヨーロッパ各地で、工業製品が農業技術の改革を促して農産物の生産競争をもたらし、中規模以下の小作農民は農村から追いやられて都市として形成された工業 地帯に流入して賃金労働者となり、軍隊への兵員補給を担い、同時に都会の消費者として市場を形成し、生産と経済の機構に組込まれて国力増強に大きな役割を 果たしました。

 

 1853年黒船来航から僅か15年で明治維新となり、長州や薩摩出身の政治家や官僚が、教育に力 を入れ、江戸時代の徒弟制度を土台にして繊維等の輸出を奨励し、短期間で国策会社による製鉄や造船等の重工業振興を図り、近代化という国力・軍事力増強 (=戦争準備)に取組んだのです。

 

 ヨーロッパと比較すると約100年遅れのスタートであり、その遅れを短期間でどれだけ追い付けるかという『植民地にされない唯一の道』を驚異的なスピードで突っ走り、ヨーロッパと同じ過程(小作農民の都市への流入と工業化)で『近代化』を成し遂げた訳です。

 

 黒船来航からの250年間の日本は、日露戦争で勝利した後に富を求めて大陸に進出し、第二次大戦で敗北しますが、戦後は短期間で復興を遂げ、今度は技術 とコストという武器で『経済・輸出戦争』に勝利して世界2位の経済大国になりました。 しかし、経済(=カネ)優先は、その裏で国民が多くの歪を抱え込んでしまい、世界的な動揺と混乱の中で不安に怯えています。

 

 日本人同士は『比較社会』で金銭とステータスを競ってきましたが『幸福』になれたでしょうか。 今、遠回りした中国が日本より100年遅れて、日本の10倍のすさまじいエネルギーで改革開放という近代化への道を走っていますが、若者の中には個々人の 生きがいが見出せない現状に疑問を訴える階層が現れており、歴史が繰り返されていることが分かります。

 

【産業革命と温暖化】

  地球温暖化は産業革命以後の工業化が招いたもので、最近の100年間で、それまでの人類が排出した量を上回る二酸化炭素を排出し、産業革命以前の1750 年の大気中のCO2濃度280ppm(南極の氷で測定)に対して380ppmと36%増え、地球の平均気温が0.74度C高くなっています。

 

 温室効果ガスのCO2換算排出量は、1990年代の10年平均では推定240億トン/年でしたが、2005・2006年は270億トン/年を超え、さらに増えています。

 CO2等の温室効果ガスは、一定量までは排出分が陸地(土壌・植物)と海洋(水・植物プランクトン・海藻)がほぼ半分ずつ吸収して空気中の濃度が安定していました。

 

  しかし、近年では自然界の許容吸収量(推定で約200億トン/年)を超えた分が空気中に滞留して温暖化が進み、多くの希少種が絶滅する状況が現れている中 で、中国など東アジア地域の急激な工業化に加え、『低開発国・地域』と言われた所も後に続き、温暖化に拍車をかけています。

 

  今、これから2030~40年までの対応によって『地球の運命が決まる』と言われており、早急な対策は人類にとって核廃絶に劣らない重大な課題と言えま す。 この点で民社党が打ち出した1990年比25%削減は先進国(EU≒20~40%)では外国荒唐無稽なものではありません。

 しかし、実現には40年前の1970年のCO2排出量を目指すもので、容易でないのも事実です。

 人類最大のテーマに対して、一部政治家や財界人が、中国など東アジア諸国等との国際競争のハンディや国民の負担増等の見解を述べていますが、このような時こそマイナス面を含めて議論を広め、最大限の技術革新を進め、国民の十分な理解の下で取組むべきだと思います。

 

【日本の進路】

 2010年に日本が中国にGDP2位の座を明け渡す事態を騒ぐ人がいますが、遅すぎたものが漸く現れてきただけであり、むしろ、これまでの日本(人)の善戦を誇ってよいと思います。

 そう思わなければ戦時に日本の礎となって散った人々や身を粉にして高度成長を支えた先達に申し訳ないというものであり、大切なのはこれからの日本の進路、日本人の生き方だと思います。

 

 これから暫く東アジアの時代が続き、出番が遅れたロシア・カナダ・オーストラリア・インド・ブラジル等が広大な土地と資源で存在を示し、その次にアフリカ諸国が台頭してくると見られます。

 そのような状況で、言わば『先進国』がコストの低い後発国と工業製品の輸出競争をすることが地球的・歴史的な本質かどうか、という視点で進路を選択することが求められる筈です。

 

 日本が歩んだように、後発国は先進国の模倣によって短期間で技術を究め、低コストで輸出拡大を図り(どの国も輸出利益で富を築きたい)、それが順に繰り返されるのは目に見えています。

 

  これからは『工業製品は後発国が作る』時代になり、文化・科学・国際関係や地域において、調和のとれた成熟と節度が求められると見るべきで、日本が確たる 進路を選択でき、国民が幸福に生きられるか否かは、そのことに日本人が気づくか、どうかに懸っていると思います。(続きます)

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