コラム

20.私の時代認識2

2010年01月14日

【米国追従で成長した日本】

 日本が米国に追随してきたのは経済と安全保障面で利益が得られたからだと思います。

 

 対米貿易は1960年代(輸入超過時代)の数千億円規模から輸出過剰による経済摩擦が起きた1985年(プラザ合意)には14兆円と拡大し、1988~89年の貿易総額(輸出・輸入)の内、対米貿易は29%を占めていました。

 

  冷戦の後に社会主義国家の相次ぐ崩壊が起こって米国の一極支配が進み、日本は第2位の経済大国へと成長しましたが、米国経済の陰りとともに対米貿易比率は 漸減の道をたどり、グローバル化という名の市場拡大、過剰な消費経済の破綻、負債をも商品化する米国発の無責任な金融工学という仕組みが世界同時不況を招 き、2008年に対米貿易は14%に落ち込みましたが、日米の経済的結びつきはさらに低下するとみられます。

 

 一方日本の2008年貿易総額において、中国18%、韓国6%、台湾4%、タイ・マレーシア・インドネシア・シンガポールが各3~2%、フィリピン・ベトナム・ミャンマー・カンボジアと続く東アジア全体で半分近くを占め、今後さらに増加する勢いです。

 

【東アジア経済圏の中の日本】

 東アジアの近年のGDP伸長はめざましく、ASEAN10ケ国に日中韓台を含む東アジア全体では2008年世界のGDP(約61兆US$)の24%を占めて米国に並び、2020年には現在のEU(加盟27ケ国)のように30%に達すると予測されます。

 

  2010年には中国が日本を抜いてGDP第二位になります。 中国は日本の10倍、世界人口の1/4を擁する国ですが、1人当たりGDPは日本の1割で、様々な要因での立ち遅れを取り戻して世界GDPの8%に到達し たところであり、むしろこれから潜在力を現すものと理解すべきで、中国の経済活動は東アジア全体を隆盛させる力となるものであり、日本もその中での立ち位 置を確立していくべきだと考えます。

 

 韓国や台湾は勃興期の日本のように繊維産業から始めて、製鉄・造船等の重工 業化を推し進め、半導体や自動車等の先端産業でも実績を上げ、東アジアでの立ち位置を明確にしている感があります。 今後は中・韓・台に続くASEAN諸国の台頭が予測され、19世紀まで存在した日本海経済圏が黄海や南シナ悔(日本名)沿岸に伸び、これから急激に発達を 遂げていくような予感がします。

 

 地球儀上で日本からの物流経路を見ると、東アジアは米国(西海岸は約 9000km、東海岸はその約2倍)や欧州(地中海側15000km前後、大西洋側18000km前後)よりはるかに近く、青島は福岡から約1000km の近距離で横浜より近く、比較的遠いハノイでも福岡から4000kmほどで、この域内の資源・食糧・原料・製品を海で機能的に繋げることができる点でも、 日本の立ち位置は東アジアにあると見ることができます。

 

【物流の課題】

 ところが、東アジアか ら日本が取り残される懸念材料もあります。 物流の主体であるコンテナ取扱量の2008年世界ランクでは、1位シンガポール、2位上海、3位香港、4位深圳、5位釜山、7位寧波、8位広州、10位青 島に対して、20位から50位に漸く東京・横浜・名古屋・神戸・大阪が登場するという状況で、東アジア物流の動きに遅れをとった形です。

 

  これまでの米国中心の貿易ではパナマ運河を通ることができる船体規格(=パナマックス:喫水12m・総トン数6万5千トン前後まで)のコンテナ船の積載量 は2000TEUから5000TEUが主流でしたが、アジア中心の物流ではコンテナ船の大型化が進むことが以前から予測されていました。

 

  現在世界の主要造船所で建造が計画されているコンテナ船はスエズ運河をギリギリ通過できる超大型船(=スエズマックス:喫水16m・コンテナ積載量 9000TEU~14000TEU)が多く、これらの船舶には干潮時水深16m以上、できれば18mの水路が必要とされ、さらにマラッカ海峡(最浅水深 25m)を通過できる巨大コンテナ船(マラッカマックス:喫水20m・18000TEU)の登場が予測される中で、日本の港は水深16m以下の規格が主体 で超大型化への対応に課題を残し、位置的にも東アジア経済圏における「裏日本」の太平洋側や瀬戸内海に集中している問題もあります。

 

  韓国が釜山をいち早くハブポート化を目指して港湾施設拡充と荷役能力向上によって時代の要請に備えたのに対して、日本では地の利が期待される福岡市の博多 港コンテナターミナルは水深14m・13mで、後発の北九州市響灘コンテナターミナルは水深15m、下関市の人工島「長州出島」のコンテナターミナルの水 深は12~13.5m規格で、これらは総トン数5万トン前後までの中型コンテナ船対応の規格であり、港の能力増強面の時期的・地理的な判断を誤ったかと思 われます。

 

 東アジアの経済成長はこれからが本番であり、大局的且つ長期的な視野で日本の物流態勢を構築する必要があります。

 

【EUに学ぶ日本の立ち位置】

 中国が人口・面積・地理・歴史からGDP2位になるのは当然のことで、永くトップの座にある米国を抜くのも時間の問題と考えられ、そう遠くない将来にインドが日本を抜き去ることも十分考えられます。

 

 それはアジアの経済状況からも当然のことであり、日本は規模に固執せずに量から質への転換を図り、東アジアにおける地域振興の推進役を担う中で、国民の生きがいや幸せを目指すべき時期にあると考えます。

 

 その先例がEU(欧州連合)の英・仏・独で、各々2008年の人口・国のGDP・1人当たりGDP(US$)は、英:6,156万人・26,800億ド ル・43,785ドル/仏:6,470万人・28,867億ドル・46,016ドル/独:82,167万人・36,731億ドル・44,660ドルで、国 のGDP(名目)は日本に次ぐ4~6位ですが、1人当たりGDP(IMF)は日本の38,559を1~2割上回っており、EUのリーダーとして成熟した国 のあり方が窺われます。

 

 英・仏・独は欧州域内で戦争を繰り返した歴史があり、今もそれぞれの内部に問題を抱えていますが、利害や過去を超えて共通経済圏としてまとめた後に地域 統合体として推し進めたもので、共通の通貨ユーロを導入して域内での貿易を盛んにして安定した地域を形成しつつあり、東アジアやその中での日本のあり方を 示唆しています。

 

 EUのマーストリヒト条約(欧州連合条約)に明確にうたわれた基本理念に賛同して参画する国は6から27ケ国に増え、2008年のGDP合計は米国を抜 き、国民の経済的豊かさを示す1人当たりGDPは、EU全体で日本(23位)と肩を並べ、北欧諸国やスイスはベストテン上位、オランダ・オーストリア・ベ ルギー・イタリア・スペイン・ギリシャなどの中堅国は10~20位前後に並び、EU域内全体のレベルが統合によって安定的に向上していることが感じられま す。

(続きます)

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