コラム

19.私の時代認識

2010年01月08日

 露呈し始めた民主党の危うさ、首相と幹事長の資金問題、財政健全化への期待を抱かせた事業仕分の後に過去を上回るバラマキ的予算、歳入の約半分を 占める44兆円の国債、国民一人ひとりに680万円がのしかかる累積860兆円の借金、深刻な就職難と理不尽な格差、年金問題、国民を繰り返し失望させる 官僚、等々の状況が閉塞感を強めています。

 

 まじめに生き、豊かさを目指して懸命に働いて世界2位の経済大国になったのに、この不安感や不公平感を払拭することはできないのでしょうか、歴史を振り返り、日本人の立ち位置と思考のあり方を考えてみます。

 

【新参者の人口爆発】

 ある人類学者が「世界は人間なしに始まり、人間なしに終わるだろう」という予言のような重い言葉を残しています。

 

  地球年齢46億年説を基準とすると、地球誕生から98.5%過ぎた7000年前に哺乳類が出現し、99.998%経た(現代から遡ると0.002% 前)10万年前に私たちの祖先である新人が現れ地球に君臨していますが、温暖化や世界的な飢餓の現状に、前記の言葉が一層現実味を帯びています。

 

 世界人口は09年に68億人に達し、2020年に75億、30年に83億、40年後の2050年には90億人前後になると見られています。

 

 飢餓人口は増え続けて現在10億人と推測され、耕地面積・水・エネルギー・食糧増産技術がほぼ頭打ちで、食糧不足は一層深刻になると言われています。

 

 2020~30年は現在50~60歳の人の老年期、2050年は子どもや孫の時代ですが、今、これまでとは視点を変えて未来に備えないと大変なことになると思われます。

 

 

【コーカソイドの覇権】

  1万年前に古代エジプト文明が起こり、2000年前のローマ時代にキリスト教が始まり、ラテン・アングロサクソン・ゲルマン・スラブ人等のコーカソイド (通称「白人」)の精神的支柱が確立され、西暦において現代まで、ほぼコーカソイドが世界をリードし、モンゴロイドやネグロイドを差別し搾取を繰り返した 歴史でもありました。

 

 ヨーロッパではオスマントルコ帝国(モンゴロイド系)の盛衰を挟んで覇権争いが繰り返され、15世紀に大航海時代が幕を開け、16世紀までにポルトガ ル、スペイン、イギリスの順で制海権を握って中東、中米、南米、北米に植民地を獲得し、先住民を駆逐又は絶滅させ、さらに仏・蘭・露が中国、東南アジア、 日本などに植民地や利権を求めています。

 

 16世紀スペインによるインカ文明とマヤ文明の滅亡、ポルトガル・スペ イン・蘭・英・仏・米がアフリカ大陸の黒人を拉致して19世紀まで続いた奴隷制度、大戦時のヒトラーによるホロコースト、終戦間際の米軍による沖縄の殺 戮・市街地空襲・広島長崎への原爆投下は、コーカソイドが近世以降に他民族に行った最悪の暴挙と考えていますが、歴史的にはつい最近のことで、その被害者 や子孫に残る傷は未だ癒えていないと云えます。

 

【表日本は裏日本】

 8世紀の奈良時代に朝廷が 遣唐使を送って大陸文化を持ち帰り、日本海を渡るための航海技術は北国船などの船型改良をもたらし、以来、日本海側各地の物流が盛んになり、やがて18世 紀の江戸中期から19世紀の明治初期までは蝦夷(江差・松前・箱舘など)東北(十三湊など)・佐渡・能登・越中(伏木など)、敦賀、境港、但馬などと大坂 の間を北前船が往来するようになり、約1000年にわたって中国や極東ロシアに及ぶ日本海側に交易・文化圏を築きました。

 

 私が住む下関は、春に下り荷と言われた西からの塩、酒、衣服等を積んで立ち寄る船と、夏以降に昇り荷と言われた北のニシン・サケ・コンブなどの海産物や木材を途中の港、港に立ち寄って商いをする北前船の中継基地として栄えました。

 

 余談ですが私の妻の実家はかって回船問屋で、先祖の墓には「黄波戸屋」と刻され、家族がついでにお参りする同業者の墓には「北国屋」という屋号が刻まれています。

 

  下関は、前記の上り下りの産物の他に、台湾・琉球・薩摩・豊後・日向・肥後・土佐などの砂糖・鰹節・コメなども集積されて問屋が軒を連ねて繁盛し、外国の 情報と富を集めた問屋の中には「小倉屋」白石正一郎のように長州藩の高杉晋作や伊藤博文などの維新の志士を支えて新しい時代の実現に貢献した商人も現れ、 坂本龍馬や西郷隆盛などが再三訪れて交わした絆がやがて薩長同盟となり、近代幕開けの舞台となりました。

 

 日本海 側が栄えた明治維新までの1000年間は太平洋側が「裏日本」でしたが、秀吉に江戸に封ぜられた家康が治山治水を進め、関ヶ原戦後の1603年に幕府を開 き、日本最大の利根川を江戸湾から銚子に河口を向けて既存の河川を運河でつないで内水面航路を整備するなどの事業で広大な関東平野を開拓し、現在の首都圏 の基礎を造っています。

 

 

【ついこの間の明治維新】

 明治維新の端緒はアメリカを発って大西洋からインド洋を経て1853年に琉球王国で開国を迫った後に浦賀沖に出現した4隻の軍艦で、ペリー提督は本国出 発の際には通商ばかりではなく、他の艦船より近代化した武装にモノを言わせて先行して通商を迫っていたイギリスやロシアを出し抜いての植民地化も命じられ ていたとされています。

 

 ペリーが浦賀の前に(薩摩藩と関係があった)琉球に立ち寄ったのは捕鯨や軍事上の拠点作りを画したと考えられており、終戦間際に圧倒的な戦力で沖縄をせん滅して、現在も基地を残すことに固執していることに、アメリカの周到な歴史的戦略を感じます。

 

 「太平の眠りをさます上喜撰(上等なお茶⇒蒸気船)たった4杯で夜も眠れず」という狂歌に詠まれた黒船来航は、19世紀初めの蒸気船実用化から僅か40 年後のことであり、18世紀以降の産業革命によってアングロサクソンの英米が一気に力をつけ、植民地化を一層押し進めました。

 

  明治維新は欧米列強による覇権争いから生まれた歴史の1コマであり、私たちの曾祖父母まで辿ると到達する、ついこの間のことですが、列強の力と怖さを知っ た維新後のリーダー達が必死に学問を身につけ、国民に勤勉と貯蓄を説き、繊維などの軽工業から産業を興し、やがて造船等の重工業を盛んにして貿易を広げ、 軍事技術や兵器を導入して短期間で近代化に成功しています。

 

【日本の近代化と国民の意識】

 司 馬遼太郎の「坂の上の雲」は秋山好古・真之兄弟、正岡子規を通して近代化への歩みを著したもので、日露戦争は小国が大国に勝利し、やり方次第で列強に伍し ていけることを国民や世界に示したと言えますが、先の大戦・冷戦・ソ連の崩壊を通して世界の主役は依然として欧米で、日本は欧米の武力と経済圏の中に有利 な立ち位置を占めようとしてきた国で、アジアで中国、朝鮮半島、ベトナムなどが大国の力の狭間で喘いでいる隙に経済を拡大した、モンゴロイドの中でも異端 的な国であると思われているのではないかと思います。

 

 東京を中心に太平洋側各地を結んだ鉄道は近代産業を振興さ せましたが相対的に日本海側を停滞させ、1000年続いた日本海側の経済圏は裏日本と位置付けられて都会の裏方役となり、地方は都会に労働力・農林水産 物・水・電力等を供給する役割を担って現在に至り、富の多くは都会や大企業に蓄積されています。

 

 維新における薩 長は「勝てば官軍」の通りに官軍になって政府としてその後の日本を引っ張り、近代までの歴史ではコーカソイド、中でもアングロサクソンのアメリカが軍事・ 経済両面で世界をリードしてきましたが、歴史や制度は常に「勝ち組」の側の論理で作られてきたもので、外交政策やグローバル化もその一環です。

 

 文化や科学は金や欲求を追求するためのものではない筈ですが、そのことを根本的に考え直す時期にきているような気がします。(続きます)

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