コラム

13.魚の味:日本人の味覚

2009年08月28日

 前号と前々号で、ブリの例で魚の価値と価格の調査結果を提示しましたが、では、消費者は魚に対する味覚や外観の見極めがキチンとできるのか?という点は(アンケート調査の詳細は別の機会にして結論を急ぎますと)・・・これもかなり確かであると言えます。
 これらのことから日本人の味覚の確かさは相当のレベルにある、と私はみています。

 

 魚の味については「さかなクン」が日本一詳しいと言ってよいと思いますが、彼がどのようにして味から魚種を特定できるのか一度教えてもらいたいものです。
 暫く会っていませんが、「さかなクン」宮澤正之さんが今のように有名になる前から館山の海で知り合うことができ、最近はテレビで活躍しているのを見るのが楽しみです。

 

 館山湾の沖の島は、私が初めて魚らしい魚に出会い、高校卒業まで年に50回以上通った私の「宇宙」であり、1999年に地元香の「漁師」菊地 勝さんから「沖の島の沖」に定置網を設置する仕事を任された時は、そこに至る過程での縁に『神の恵み』を感じました。
 測量・設計・張立てに全力を傾け、規模(沖側水深22m)からすると通常5人位で操業する網を2~3人で操業できるようにして、身網は活魚になる磯魚・クロダイ・スズキ・アオリイカ、回遊魚のイナダ・アジ・カマスなどを確実に漁獲できる底建網を勧めました。
 あれから10年。「菊地丸」は私の予想以上の好調な水揚げを続けておられます。

 

  その後も様子を見に時々「菊地丸」に乗船させてもらっていましたが、ちょっと変わった若者とよく同乗して知り合いましたが、それが宮澤正之さんで、船上で は独特のカン高い声で感動したり、何にでも興味を示していましたが、話合ってみると情報が確かで礼儀正しい青年でした(TVチャンピオン5連覇達成の頃で したが、私は全く知りませんでした)。  

 

 まさか今のようにチョー有名人になるとは思っていなかったので「あなたはこれから何でメシを喰って行くのですか」などと余計なことを聞いたことがあります。
彼のような人が、小さい子供や青少年、そして次の時代の味覚を決める主婦や若い女性に、魚や海のことを語ってくれることは漁業者にとって大きな励みになります。

 

  さて本題に戻りますが、日本人は味覚に対して飛びぬけて優れた民族であり、その素養が多様な食を受け入れ、世界一の長寿が得られたのではないかと推測して います。その大切な味覚を鍛えてくれたのがコメ、魚介類、海藻、季節の野菜、及びそれらの加工品で、これらが概ね淡白な味であることと関係が深い、という 確信に近い考えを持っています。

 

 例えば日本人は海苔、ワカメ、コンブ、テングサ(ところてん)、ヒジキなどの海藻を好んで食べる稀有な民族ですが、味のないような海藻を「旨い」と感じることができる繊細な味覚を持っているからこそ、日本の食文化が高いレベルに達したのだと思います。

 

 最近は韓国でも板海苔が盛んに作られています。 甘辛く濃い味付けがしてあり、初めは「ウン?うまいかな?」と思いましたが、すぐに飽きてしまいました。
 私には普通の海苔に醤油を少し付けてご飯に載せて食べるのが最高ですが、民族的、文化的に最も近いお隣の国との間でも嗜好にこれだけの違いがあります。

 

 ところで、あなたは、海苔に醤油を付けた面を下にしてご飯に載せて食べますか、反対に載せますか。ここにも人によって好みが表れます。
正解は・・・その人がそれでよければ(うまいと思えば)それが正解であり、屁理屈は不要だと思います。 尚、私は小さい頃から(多分、親がそうだったから)醤油を付けた面を下にすると醤油がアツアツご飯に馴染むので、それを「旨い」と感じています。

 

 正月に食べるモチはご飯の加工品ですが、余分な味付けがされず、特有の味と食感を楽しむことができ、搗きたてに大根おろしの絶妙さ、焼けば焼いた味になり(これを醤油に付けて海苔を巻いたのが最高)、雑煮、ぜんざい、黄な粉なども楽しむことができます。
 味が淡白であることが主食用保存食として非常に優れており、その点で、ご飯も淡白な味が主食としての優れた特性であり、ほんの少しのおかずや味付けで「旨さ」を味わえるという特長があり、そこに日本人の味覚の原点があるように思われます。

 

 そしてもう一つ、日本人の味覚を育ててきたと思われるのが、水です。
日本の井戸水は軟水で、そこに微量のミネラルが含まれた「うまい水」に恵まれてきたことによって、日本人の繊細な味覚が培かわれてきたのだと推測しています。
 山登りなどで岩清水にめぐり合うと、身体が欲していた水分とは別の「うまさ」を感じた経験は多くの人にあると思いますが、あの味は非常に僅かな量のミネラルなどを舌、唇、喉が感じ取っているからでしょう。

 

 私は若い時に富山県に16年在住しましたが、立山連峰の雪が伏流水となって野に下り、豊かな地下水となって県内のあちこちで数十センチも自噴しているのが見られ、生活水はもとより、冬の道路融雪用にも使えるほど豊富で、まさに『山の恵み』そのものでした。
  「本当にうまい」水で、二日酔いの朝などは「こんなにうまいものを忘れて、何で酒なんか呑んだのだろう。」という自戒の気持にさせられました。県内には日 本の名水に選ばれたものもあり、色々飲み比べてみると微妙な違いがあり、そこに到達するまでに含まれた、ごく僅かな成分の相違が各々の水の味を作っている のでしょう。



 その上、富山県は日本でも有数の「旨い魚」を水揚げする地域で、私と家族はそこで『海の恵み』にも与ることができました。(続きます)

カテゴリ:魚の味