コラム

12.魚の味:産地による味と価格の違い

2009年07月30日

    前回(11)ブリの産地と天然・養殖の違いについて、成分分析、生産者価格、外観と食味アンケート調査の結果を述べましたが、この時もう一つの「実験」を試みました。

 

    12月の対馬の天然ブリ1250円/kgに対して富山の寒ブリは約3倍という状況から、対馬のブリを寒ブリの本場に出したらどうなるかという点を試してみた訳です。
対 馬に「ブリ飼い付け」という古くから行われてきた漁法があり、漁場とする瀬でブリに撒き餌をして飼いならすものですが、秋に釣ったものは冬のブリより体重 が軽く、脂も乗っていないので、これを釣ってどんどん投餌して太らせて、12月に出荷すると体重が増えて値段が上がるので現地では重要な事業になっていま した。

 

    尚、ブリ飼い付け漁業は対馬周辺のブリの回遊に影響を及ぼしていると言われ、春先には産卵後の痩せた「大根」と呼ばれるブリが対馬南端の厳原に近い豆酸の定置網などで漁穫され、これを畜養することもありました。
因みに春先の大根ブリは1本1,500円(200円/kg)前後、秋の釣りブリは8~9kgもので1本5~6,000円前後ですが、これが3ケ月から最長1年3ケ月ほどの蓄養によって10,000円(1,000円/kg)前後になるので相当の利益が見込めます。

 

    しかし、それでも富山の寒ブリの1/4ほどであり、本当にそれだけ価値が違うのか、脂の乗った蓄養ブリは寒ブリに間違われて高く売れるのではないか、とい う単純な疑問に期待を込めて12月に獲れた天然釣りブリと、12月に水揚げした蓄養ブリを数本ずつ金沢の魚市場に何回か送ってみました。
結果は、蓄養ブリは最初だけが20,000円ほどでしたが2回目以降は10,000円前後、天然釣りブリは12,500円前後で、福岡の市場に出すのと大差ない価格になりました。

 

【成分分析結果】(②対馬天然釣りブリと、③養殖ブリは前号を参照して下さい)
①富山の寒ブリ(体長75cm・10.4kg)脂質=背23%:腹34%:尾20%(3800円/Kg)
④対馬畜養ブリ(体長73cm・10.7kg)脂質=背 14%:腹27%:尾8%( 930円/kg)

 

【主婦を対象とした素性を伏せた外観(全体/部分)評価、食味アンケート調査の結果】
④は外観(表皮・鰭が黒く、肉と内臓が白い)で「養殖」と見られ、脂味が強いと感じ
る人が多く、総合的に養殖ものと同程度の評価となり、身卸し(直後に身割れが発生)
後の冷蔵保管中の状態変化も③養殖ブリに近いもので、寒ブリが約1週間後でも刺身で
食べることができたのと対照的に、賞味期間が短い結果になりました。
このことは、プロの目は非常に鋭く、魚の状態とその価値を十分見極めて価格をつけており、「確かな目」がなければこの世界ではメシが喰えないことを示しています。
「魚はゴマカシがきかない」ことをあらためて学びました。(続きます)

カテゴリ:魚の味