コラム

6.魚の味:魚の成分と味(食肉との比較)

2009年06月03日

《食肉と魚肉の成分比較》 :実測値及び概要値・・・個体差や部位による差異がある

種類:産地・季節など

水分

タンパク質

脂質

灰分・糖質

ブロイラー:ささ身

豚 :ヒレ

牛の赤身 /豚のロース(国産)

牛     :霜降り (国産)

75~79 %

70~74

64~70

46~56

19~23 %

20~22

20~22

18~22

1  %

4~ 8

8~15

25~35

1 %

1

1~2

1

本カツオ(中サイズ):上り

本カツオ(中サイズ):下り

秋サンマ(中サイズ):太平洋

天然寒ブリ(10kg):背/腹/尾

72

67

60

56/48/58

26

25

24

20/17/21

1

6

15

23/34/20

1

1

2

1/1/1

実測値:(財)日本食品分析センターによる

1タンパク質の量と質

タンパク質は哺乳類や魚介類などを構成する基本成分で、牛、豚、鶏、鯨、魚、貝、甲殻類などの筋肉中のタンパク質の割合はほぼ同じでおよそ20%前 後。肉の成分からタンパク質を除くと残りの殆どは水分と脂質で、脂質が少ない食肉や魚は『脂味』のない淡白な味になりますが、イノシン酸やグルタミンなど の『旨味』成分の味わいがあります。

1日当たりタンパク質摂取量の目安は体重の0.08~0.1%で(体重60Kgでは48~60g≒240~300gの食肉や魚肉に相当)、農水省統計では1985年以降80g以上の供給が続き、最近では、量(過剰摂取)・質・味の問題を指摘する声が多くなってきました。

 

2肉の脂肪と味

食肉のタンパク質中の『旨味』成分イノシン酸の量は魚より少なめの0.04~0.2%で、牛肉は豚肉の半分以下のために脂肪が少ない肉は物足りない 味に思えますが、昔から牛肉を食べてきた欧米人は牧草主体で育てた脂肪の少ない牛肉に本来の『旨味』を感じることができるようで、日本のように脂肪を多く した肉は『脂味』と健康面で敬遠されます。

 

日本人が食べる牛や豚は穀物飼料などを多くして脂肪を含ませることに力が入れられ、肩・肩ロース・ロースは脂肪が多く水分が少ないために味が濃厚になり、中でも霜降り牛肉が最上とされ、豚ロースも脂肪が多いものを評価する傾向がありました。

しかし、食肉脂肪は常温では固体で、飽和脂肪酸が多く含まれるために摂取後に体内で蓄積しやすく、LDLコレステロール(通称:悪玉コレステロー ル)の要因になるなど健康面の問題が指摘され、最近は、肥満を嫌ってカロリーの低い食材を望む傾向が強くなり(成人女性の肥満割合が減少している)、食肉 の脂肪を減らす動きが強まっています。

 

牛肉中の脂肪は一般にヒトの体温より融点が高く、ナマで噛むとベトつく感じですが、調理の熱で融けた時に『脂味』が強くなり、日本人の多くはこれを賞味してきました(ステーキを熱い鉄板に載せて出すのは脂肪が融けた状態を長時間保つ目的があります)。

豚肉のタンパク質はイノシン酸が多いので『旨味』があり、脂肪が牛より融点が低いので冷めていても食べた時に口中で融けますが、揚げたてのトンカツは脂肪がよく融けて口中に広がるので『うまい』と感じます(これを「ジューシー」などと表現する人もいます)。

 

3魚の『旨味』と『脂味』

魚介類のタンパク質にはイノシン酸が多く、それだけも『旨味』がありますが、別の旨味物質グルタミンがコンブ・青魚・貝類に多く含まれており、両方 の旨味成分を含んだ魚介類や、魚や貝と一緒に海藻を食べた時に(鰹節とコンブのダシを使った時と同様の相乗効果で)『旨味』が一段と引き立ち、なんとも言 えないうまさを感じます。

 

魚介類にはこの他に様々な旨味成分が魚種ごとに含まれて各々の味が形成され、産地・季節・成長度によっても成分が異なるので味の多様性を楽しむことができます。

例えばサンマはタンパク質中のイノシン酸が多い上に、焼いた時に脂肪油が表面に出て『脂味』が倍加されて特有のうまさを感じますが、脂肪油は常温で も味わえるので、刺身では『旨味』にやや抑えた『脂味』が混じったうまさを味わうことができます。尚、サンマは太平洋と日本海では脂の乗りが異なり、産卵 の前後でも味が大きく変わります。

 

4魚の脂肪油

サンマ、ブリ、カツオ、マグロ等の春から夏に日本近海を北上する回遊魚はオキアミやコペポーダ(動物性プランクトン)を直接又は間接的に(魚を経由 して)摂餌しますが、三陸沖などで脂肪油をたっぷり含んだカラヌス・プルムクルス(動物プランクトン)を摂って脂肪油を蓄えるので、北の魚や秋から冬の南 下(下り)群は脂がよく乗っています。

 

魚は変温動物で体温が低いために油脂分が常温では液体(脂肪油)で、脂肪油は不飽和脂肪酸を多く含み、ラードや霜降り(脂肪交雑)のように分離せず に筋肉内に液体として浸潤した状態で含まれるため、脂が乗ったサンマ・寒ブリ・トロなどは肉全体が白っぽく見えますが、その状態こそ健康上安全な性状を示 していると言えます。

 

魚介類の脂肪油に含まれる不飽和脂肪酸は中性脂肪やコレステロールを減らす作用があり、高血圧・動脈硬化の予防や治療に効果があると言われ、イワ シ・アジ・サバなどの青魚やブリ・カツオ・マグロなどに多いω-3系のDHAとEPAは、脳梗塞・心臓病・腎臓病・痴呆などの予防に有効で、食肉に多い飽 和脂肪酸や植物油に多いω-6系の不飽和脂肪酸の過剰摂取が関わると見られる大腸ガンの予防にも効果があるとされ、魚介藻類に多いミネラルやビタミンと併 せて、健康な体の形成に不可欠と言われています(続きます)。

カテゴリ:魚の味